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木馬 1928年
Caballo de madera
[禁無断転載]
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マヌエル・アルバレス・ブラヴォ(1902 - )は、現在95歳。メキシコを代表する写真家であるばかりでなく、1930年代より世界の重要な作家として注目され続けて来た写真家です。
「私は、メキシコ・シティの大聖堂の裏手で生まれた。そこは古代メキシコの神々の寺院が建っていたであろう場所で、1902年、4月2日だった。」マヌエル・アルバレス・ブラヴォは、祖父・父親が画家という家庭に生まれました。家計を助けるために会計学を学んだのち、政府の財務局に勤務しながら、文学・絵画・音楽を学びます。やがて写真に興味を抱き、1924年に初めてカメラを購入し、写真を本格的にはじめます。1927年、メキシコの写真家ティナ・モドッティに出会い、エドワード・ウエストンを紹介され、その交流を皮切りにポール・ストランド、アンリ・カルティエ=ブレッソン、アンドレ・ブルトンらと親交を持つようになります。シュルレアリスムの影響を受け、1930年代には独自のスタイルを確立し、メキシコのモダニズムを代表する写真家として活躍をはじめます。
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カボチャとカタツムリ 1928年
Calabaza y caracol
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幼い頃にメキシコ革命(1910-17年)の高揚期の武力闘争を体験し、死に直面したこと、そしてメキシコの伝統的な行事である万霊祭の儀式も大きな影響を与えたと語っています。改革期の混沌とした社会を経て、やがて近代化に入るという大きな変化を遂げる時代を生きたのです。そして、他のアーティストたち・メキシコ革命と関わり、ヨーロッパの現代美術と土俗的な伝統を結合させ、力強い社会表現を壁画運動という形で推進したディエゴ・リヴェーラ、またアルファロ・シケイロス、ホセ・クレメンテ・オロスコなどからも大きな影響を受けました。 |
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永遠なるものの肖像 1935年
Retrato de lo eterno
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メキシコでは毎年、11月12日に万霊祭が行われます。子供たちが砂糖でできた玩具の頭蓋骨を食べるというものですが、この儀式は、メキシコ人が死と生の距離を極めて近いものとして受けとめている象徴でもあります。16世紀のスペイン占領によって、歴史の転換を強いられた民族の意識のなかに蓄積された「時」に対する感性には、二度と戻らない楽園への郷愁、明日はないかもしれないというメキシコ人の「時」の儚(はかな)さが根底にあるのです。死は生の出口であり、救いを求める逃げ場であり、また生の入り口ともなるということが、瞬間にして髑髏(しゃれこうべ)が壊れるという行為に表現されているのです。代表作である「永遠なるものの肖像」や「評判の良い眠り」にも、強烈な光のなかに、確実に存在しながらも、どこか生の危うさを感じさせ、また同時に永遠に続くかのような「時」を見ることができるでしょう。「人が現実に細かい注意を払えば、あらゆるものが実は不思議で素晴らしいことを発見すると私は信じている。人々は人生そのものが内包するファンタジーに気が付いていないのだ。」と語るアルバレス・ブラヴォの作品はメキシコの伝統と現代のユーモア、そして何よりも愛情に溢れたものです。
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評判のよい眠り 1938-39年
La buena fama durmiendo
[禁無断転載]
ポストカード 6枚セット(900円)
(ミュージアムショップ、オンラインショップにて取り扱っております)
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アルバレス・ブラヴォは、メキシコの美術館設立や写真教育にも従事し、多くの写真家を育ててきました。70年代より世界各地で回顧展が行われ、本展は日本で初めての大規模な回顧展であり、作家所蔵の作品176点を展示します。メキシコ・シティに近い歴史的地区コヨアカンに住み、95歳の高齢にありながら、現在も撮影・プリント作業を続けています。 |