2024年5/4(土)13:00~13:40、写真家でYPOBでもある伊原美代子さんが、実の祖母とオッドアイの飼いねこをハートフルにとらえ、写真集でも人気の高い「みさおとふくまる」。YPでコレクションした22点の展覧会に併せ、伊原さんをお迎えしてギャラリー・トークを行いました。朝早く遠方から駆け付けたファンもいらっしゃり、展示作品を鑑賞しながら、楽しいエピソードを語っていただきました。
右:伊原美代子さん
伊原「最初は祖母(みさおさん)一人だけの撮影で、ふくまるが画面に入ってこないようにちょっとどいてよって、つまみだしていたんです(笑)」。
いわゆる記念写真風に、ついポーズをとったりしてかまえてしまうみさおさんが〝自然な″撮影に慣れてくれるまで説得すること、なんと一年半。思いのほか、時間がかかっていたのですね。でも、途中でねこと人間のツーショットがフォトジェニックだと気付き、「みさおとふくまる」の撮影がはじまりました。
伊原美代子《みさおとふくまる》2011 ⒸMiyoko Ihara
カメラ目線の多いようにみえる「ふくまる」ですが、撮られていることを、どう感じていたのでしょう。
伊原「黒い物体をいつも自分に向けてくるな、それで何かしているな、とは感じていたようです。」
青々とした田んぼのあぜ道を、自転車のカゴにふくまるを乗せて走るみさおさんを望遠レンズでとらえたシーン。
伊原「ふくまるは、遠くから、あ、また黒いのを向けているな、と意識してこっちをみていますが、耳の角度で、またかよ、と、ちょっと嫌がっていることがわかるんですよ」
伊原さんの鋭い観察眼がかいまみえた言葉でした。
いつもはおとなしい「ふくまる」でしたが、猛ダッシュで助走しては高い棒のてっぺんによじのぼることがよくありました。そのシーンをとらえたモノクロの展示作品を見ながら
伊原「でもいつも自力で降りられず、私が救出していたんですよ。なんで毎回同じことするのかなって(笑)。かなり晩年になるまで、やってました」
伊原さん自身が一番好きな作品は秋の日差しがふりそそぐ紅葉の中の一人と一匹。うつろう四季をとらえるのも実はむずかしかったけれど、この一枚には達成感があったといいます。
伊原美代子《みさおとふくまる》2012 ⒸMiyoko Ihara
季節の行事やパーティーがもともと大好きだったみさおさん。ご主人を亡くされたあとも、クリスマスや米寿をちゃんとお祝いして、孫の伊原さんとふくまるとの撮影も存分に楽しんでおられたとのこと。米寿の写真のケーキは伊原さんの手作りでした。
伊原美代子《みさおとふくまる》2012 ⒸMiyoko Ihara
伊原「年月を重ねるうちに、ああ、このままずっとこの時が続くわけではないんだな、と気づいて、それからは、この一瞬、一日を大切にしようという思いを深めながらの撮影でした。」
写真集の出版とともに、いつしか海外からもSNSで多くのコメントが寄せられるように。ネットで翻訳しながら、ひたすら返信した日々の中、これほど多くの人とコミュニケーションができる写真の力にも驚いたそうです。
今回は初めてKMoPAにご来館くださった方々も多く、持参された写真集にサインをもとめられる方もおらました。伊原さん、そしてご参加くださったみなさま、本当にありがとうございました!本展覧会は、5/26(日)まで開催中です。
会場:清里フォトアートミュージアム内「パトリ」(入場無料)
会期:4/20(土)~5/26(日)10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:火曜日