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「おやこ写真教室」開催

9月12日(日)清里フォトアートミュージアムにて「おやこ写真教室」開催

リンクはこちら:おやこ写真教室プレスリリース_清里フォトアートミュージアム

 

細江英公の写真:暗箱のなかの劇場

The Photographs of Eikoh Hosoe: The Theatre Within the Dark Box

 

会期:2021年7月17日(土)~12月5日(日)

休館日:毎週火曜日(7/17~8/31は無休)

開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)

 

細江英公の回顧展「細江英公の写真:暗箱のなかの劇場」を7月17日(土)~12月5日(日)まで開催
半世紀余にわたり、独自の美学を展開し、国際的に高い評価を得て来た細江英公の代表作およびデビュー作から近作、映像作品まで約160点を展示

清里フォトアートミュージアム(K・MoPA/ケイモパ、山梨県北杜市)は、7月17日(土)から12月5日(日)まで「細江英公の写真:暗箱のなかの劇場」展を開催します。
当館・館長である写真家の細江英公(88)は、戦後日本の写真を切り拓く中心的な存在として、長年にわたり活躍し、世界的にも高い評価を受けている写真家です。戦後、記録を重視するリアリズム写真が時代を席巻するなかで、写真家は被写体との関係性によって表現をつくり出していくもの、との認識に立ち、エロスと肉体のテーマに挑んだ『おとこと女』(1961年)、三島由紀夫を被写体とした『薔薇刑』(1963年)、舞踏家・土方巽と幻想世界を創出した『鎌鼬』(1969年)など、物語性の高い作品を次々と発表しました。本展では、これらの代表作を発表時のヴィンテージ・プリントにてご覧いただきます。また、初のデジタル撮影による立体作品〈人間ロダン〉(2008年)、1960年制作の映像作品《へそと原爆》、知られざる写真絵本など約160点を展示します。
「暗箱(あんばこ)」とは大きな箱型のカメラのことをいいます。一人の表現者が暗箱を通して繰り広げてきた半世紀にわたる芳醇な写真世界を振り返ります。

細江英公の歩み
■写真家を目指すきっかけ

《ポーディちゃん》1950年

細江英公は1933年、山形県米沢市に生まれ、すぐに東京へ移ります。写真家を目指すきっかけとなったのは、18歳の時、「富士フォトコンテスト」学生の部最高賞(1951)を受賞したことでした。その受賞作が《ポーディちゃん》。細江は当時、英語を学ぶことに興味を抱き、知人の紹介で米軍居住地を訪れていました。そこで遊ぶ子どもたちを、父親から譲られた英・ソルントン・ピッカード社の中型カメラで撮影したのです。手ブレしないように蛇腹付きの重いカメラを芝生の上に置き、自分も腹這いになり、少女と同じ目線で撮影した写真が、学生の部の一位となったのです。その受賞がきっかけとなり、東京写真短期大学(現・東京工芸大学)へ進学します。

■時代を切り開くアーティストたちとの出会い
東京写真短期大学(現・東京工芸大学)へ入学と同時に、当時の既成の美術団体や権威主義を否定し、自由と独立の精神による制作を目指すデモクラート美術家協会を主催していた前衛美術家・瑛九(えいきゅう、1911-1960)と出会います。また、幅広いジャンルの美術家と交流したことは、細江の作家活動に決定的な影響を与え、原点となりました。記録を重視するリアリズム写真が時代を席巻するなかで、細江は自己の内面的な意識を写真として表現することを模索し続けました。

■暗箱のなかの劇場
暗箱(あんばこ)とは、大きな「箱型のカメラ」を指し、また「カメラ」はラテン語で“部屋”を意味する言葉です。18歳の細江のデビュー作となった《ポーディちゃん》を撮影したのは、上から覗き込んで撮るタイプの“暗箱”カメラでした。その世界に魅了された細江は、やがて芸術家の肖像や舞台空間などを捉え始めます。

■20代より次々に話題作を発表

《薔薇刑 作品5》1961年︎

写真家が表現すべきものは、被写体の側にすでにあるものではなく、写真家と被写体との関係性においてつくり出していくものとの認識に立ち、安保闘争に揺れる1961年に発表した『おとこと女』では、肉体を裸体のオブジェにまで解放し、二つの性が対等に拮抗するドラマを鮮烈に描きました。そして、三島由紀夫を被写体にバロック的な耽美空間を構築した『薔薇刑』(1963年)、舞踏家・土方巽を被写体に東北地方の霊気と狂気の幻想世界を創出した『鎌鼬』(1969年)など、物語性の高い作品を次々と発表しました。

■日本から世界へ
1969年にはアメリカで初めて細江の個展が開催されました。日本では未だ写真が印刷原稿の一部と考えられていた時代に、アメリカのギャラリーでは既に作品が販売され、美術館で収蔵されていました。細江は、その事実をきっかけに、写真家自身が製作する“オリジナル・プリント”の重要性に目覚めます。以後、アメリカを中心として海外にも発表の場を広げ、ワークショップを始めとする写真教育、写真のパブリック・コレクションの形成など、社会的な活動にも注力するようになりました。1974年には、肉体を高度に抽象化して生命のエッセンスを抽出した『抱擁』を発表。また、スペインの建築家ガウディに魅せられ、細江が「魂を持つ巨大な肉体」と表現するその建築を撮影し、新たな世界を開示します。1992年からは、世紀末を迎える時代への危機感を背景とし〈ルナ・ロッサ〉を手がけ、また、2010年には初めてデジタルカメラで撮影した〈人間ロダン〉を発表しました。
本展では、1950年撮影の《ポーディちゃん》のヴィンテージ・プリントをはじめ、代表作の数々、また、知られざる写真絵本の世界など約160点を展示し、一人の表現者が繰り広げてきた半世紀以上にわたる芳醇な写真世界を振り返ります。展示作品は一部を除き当館の所蔵作品です。

■清里フォトアートミュージアム館長として
清里フォトアートミュージアムは、1995年に開館し、昨年25周年を迎えました。開館25周年を記念し、初代館長である細江英公の個展を予定しておりましたが、コロナ禍のため、本年の開催となりました。
開館にあたり、細江は、清里フォトアートミュージアムの基本理念のひとつである「若い力の写真:ヤング・ポートフォリオ」を発案しました。ヤング・ポートフォリオとは、35歳までの世界の写真家の作品を公募・選考の後に購入し、永久コレクションすることによって若手写真家を支援・育成する活動です。世界でもユニークなこの活動により写真文化に寄与して来たことが高く評価され、2004年公益社団法人日本写真協会より文化振興賞を受賞いたしました。

細江 英公・略歴
1933年、山形県米沢市に生まれ、東京で育つ。1951年、富士フォトコンテスト・学生の部最高賞受賞をきっかけに、写真家を目指す。1956年「東京のアメリカ娘」で初個展。1959年、東松照明、奈良原一高、川田喜久治らとともに写真家によるセルフ・エージェンシー「VIVO」を結成、戦後写真の転換期における中心的な存在となる。海外でも数多くの展覧会が開催される一方で、国内外でワークショップをはじめとする写真教育やパブリック・コレクションの形成等、社会的な活動にも力を注いだ。2003年「生涯にわたり写真芸術に多大な貢献をした写真家」として、英国王立写真協会より創立150周年記念特別勲章を受章。2007年、写真界のアカデミー賞といわれるルーシー・アワード(米)のビジョナリー賞を日本人として初受賞。2007年、旭日小綬章、2008年、毎日芸術賞を受賞。2010年にはナショナル・アーツ・クラブ(米)より、写真部門の生涯にわたる業績賞を日本人で初めて受賞。同年、文化功労者として顕彰された。2017年、旭日重光章を受章。東京工芸大学名誉教授。1995年より清里フォトアートミュージアム初代館長。

展示作品・シリーズ(制作年順)
《ポーディちゃん》他初期作品 1950-54年
〈おとこと女〉1959-60年
《へそと原爆》(映像作品 脚本・監督・撮影・編集)1960年
〈たかちゃんとぼく〉(写真絵本)1960年
〈おかあさんのばか〉(写真絵本)1964年
〈抱擁〉1960-70年
〈大野一雄〉1960-1997年
〈薔薇刑〉1961-62年
〈鎌鼬〉1965-68年
〈知人の肖像〉1965-72年
〈シモン・私風景〉1970-71年
〈ガウディの宇宙〉1977-84年
〈ルナ・ロッサ〉1992-96年
〈人間ロダン〉2008-10年
特別展示横尾忠則《土方巽と日本人 - 肉体の叛乱》ポスター 1968年
英・ソルントン・ピッカード社カメラ「ジュニア・スペシャル」(1950年、細江が《ポーディちゃん》を撮影したカメラと同型)

 
会期中の入館無料デー(どなたでも無料でご入館いただけます)●11月8日(月)八ヶ岳の日
●11月20日(土)山梨県民の日
 

1. 《おとこと女 作品1》1960年

 

2. 《おとこと女 作品20》1960年

 

3. 《鎌鼬 作品8》1965年

 

4. 《鎌鼬 作品17》1965年

 

5. 《抱擁 作品52》1970年

 

6. 《薔薇刑 作品32》1961年

 

7. 《薔薇刑 作品5》1961年

 

8. 《薔薇刑 作品2》1962年

 

9. 〈ガウディの宇宙〉より《サグラダ・ファミリア I》1977年

 

10. 〈シモン・私風景〉より《隅田川吾妻橋》1971年

 

11. 〈知人の肖像〉より《澁澤龍彦》1965年

 

12. 〈ルナ・ロッサ〉より《ひまわりの歌》1992年

 

13. 《ポーディちゃん》1950年

 

14. 写真絵本『たかちゃんとぼく』より 1960年

 

15. 写真画帖「人間ロダン」より 1998年

 

KMoPAコレクション展、ウォール・ストリート・ジャーナルに記事掲載

米カリフォルニア州・サンディエゴの写真美術館、Museum of Photographic Arts(MOPA)に巡回中の当館の収蔵作品展「Beginnings, Forever: From the Collection of the Kiyosato Museum of Photographic Arts / Shinnyo-en」(邦題:原点を、永遠に。)が、世界を代表する経済紙の一つとして国際的に大きな影響力を持つ新聞ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)電子版の展覧会レヴューにて、2021年5月19日に紹介されました。

細江英公《おとこと女 #20》(1960) ⒸEikoh Hosoe

 
執筆は、同紙で写真に関する記事を書いている写真家のウィリアム・メイヤーズ(William Meyers)氏。MOPAのデボラ・クロチコ館長によると、ウォール・ストリート・ジャーナルへの記事掲載はMOPAでも初めてとのことでした。

 
 

 
 
以下、記事の一部抜粋

原点を、永遠に。
〜清里フォトアートミュージアム/真如苑コレクション〜展」評 青春のレンズを通して

サンディエゴ写真美術館、日本の姉妹館である清里フォトアートミュージアムの所蔵作品より、35歳以下の写真家の作品を中心に展示

Lewis W. Hine<児童労働シリーズより>(1909)

 
「パンデミックにより閉館が続いていたMOPA(サンディエゴ写真美術館)ですが、この度、姉妹館でもある日本の清里フォトアートミュージアムの収蔵作品から成る「原点を、永遠に〜清里フォトアートミュージアム/真如苑コレクション〜」展をもって再度開館することになりました。」
 
「仏教団体である真如苑は1995年にKMoPAを設立し、著名な写真家である細江英公(1933年生)を館長に任命。細江氏はKMoPAの収蔵を担当し、1900年以降の、写真家が35歳までに制作した作品に重点を置いています。氏によって厳選された153点を展示する今回の展覧会は、当初KMoPA開館25周年を記念して2020年にサンディエゴで開催される予定でしたが、新型コロナの影響で今年に延期となりました。」

Lou Stoumen 《海軍兵と少女、ニューヨークの地下鉄にて》(1940年頃)PHOTO:LOU STOUMEN ARCHIVE/MUSEUM OF PHOTOGRAPHIC ARTS

 
「MOPAのエグゼクティブ・ディレクター兼チーフ・キュレーターであるデボラ・クロチコ氏は、サンディエゴでの「原点を、永遠に」展を、3つの章から構成しました。第1章の<20世紀の写真>では、アンセル・アダムス、アンリ・カルティエ=ブレッソン、アーヴィング・ペンなどの名作が並び、日本からの外国の写真家への敬意を表しているかのようです。第2章<戦後日本の写真>では、優れた才能を持つ写真家たちが、第二次世界大戦での侵略、敗北、占領下時代からの見事な復興を遂げた日本の形成を担い、伝統的な文化と現代における位置づけなどを問いただした時代を取り上げます。」
 
 

細江英公《薔薇刑 作品32》(1961) ⒸEikoh Hosoe

 
「この<戦後>の章には、長野重一が1952年に撮影した《広島:教会に集まった被爆した女性たち》があります。暗い空間に円を描くように座る女性たちは、上から光が当たり、膝の上には本が置かれており、あたかもトラウマからの癒しを求めるかのよう読書に没頭している姿が捉えられています。」
 
「東松照明の《家》(1959年)は、同じような要因なのか、或いは自然災害に由来するのか、光沢のある素材の長方形のシートに粘着性のある物質が塗られ、その上に大量の昆虫が死んでいる様子がクローズアップされています。眩しいほどに明るいシートと黒い昆虫のコントラストが、昆虫の死、そしてその死骸がいかに無作為であるかを強調しているようです。東松は、日本の視覚文化の伝統的な要素を作品に取り入れています。白黒は水墨画や書道を思い起こさせ、被写体は俳句や視覚芸術における昆虫の役割を思い起こさせます。また、東松の作品によく見られるように、「家」が単に虫の死骸について語っているだけでないことは明らかです。」(中略)
 
同じ章では、「戦後日本の悩める精神を象徴するような作品」として、森山大道の《青森・三沢》(1971年)、細江英公《おとこと女 #20》(1960年)、内藤正敏の《トキドロレン》(1962-63年)、鬼海弘雄の《宝くじを買ったというひと》(1973年)と《写経をするというひと》(1974年)がクローズアップされています。
 
 

アル・ラブコフスキー《もっとレゴが欲しい》(2016) ⒸAl Lapkovsky

 
記事続き

「KMoPAでは、35歳以下の全世界からの写真家を対象とした年1回のコンペティション「ヤング・ポートフォリオ」を通じて若手の作家を奨励しています。これまでに46カ国から804名の応募者による6,253点の作品を収蔵作品として購入しており(2019年現在)、その中から選りすぐりの作品を本展の第3章に展示しています。非常にバラエティに富んでいますが、「ヤング・ポートフォリオ」の作品は他の章に比べてカラーのものが多く、またサイズも大きく、フォトショップが用いられたものが多い傾向にあります。」(中略)
 
YP作品の中からは、「上半身裸の中性的な男子の腰から茎の長いケシの花が生えている」チョン・ミンスー(1975年生、韓国)のCプリント作品《Flowers》(2007年)、少年が浮遊するアル・ラプコフスキー(1981年生、ラトビア)のアーカイバルインクジェットプリント《もっとレゴが欲しい》(2016年)、乳児を抱えた女性が波へと挑むK.M.アサド(1983年生、バングラデシュ)のアーカイバルインクジェットプリント《ロヒンギャ難民》(2017年)、北野謙<Our Face>(2003年)が紹介されました。

北野謙 <Our Face> (2003) ⒸKen Kitano

 
執筆者のメイヤーズ氏は、記事の最後を「ヤング・ポートフォリオ」は、KMoPAが継続的に行っている写真文化への貢献なのです。」と締めくくっています。
 
 

*この記事に紹介されている下記の作品は、当館サイト内の「ヴァーチャル美術館」でご覧いただけます。
 こちらをクリック→ https://www.kmopa.com/virtual/

 長野重一《広島:教会に集まった被爆した女性たち》
 東松照明《家》
 内藤正敏《トキドロレン》
 細江英公《おとこと女 #20》
 
 

 
 

<サンディエゴ巡回展情報>

展覧会名:Beginnings, Forever: From the Collection of the Kiyosato Museum of Photographic Arts / Shinnyo-en
会場:Museum of Photographic Arts(MOPA)
会期:2021年4月16日~9月19日

https://mopa.org/exhibitions/beginnings-forever/
https://youtu.be/ZaUmNcJIjNA

◆この展覧会は、2022年夏に当館での開催を予定しております。どうぞお楽しみに。
 

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