第40回木村伊兵衛賞にYP作家2人がノミネート
すでにご存知の方も多いかと思いますが、第40回木村伊兵衛賞の候補者が発表となりました。ノミネートされた8人の中に、YP作家のERICと林典子の二人がいます。
対象作品となった作品は、ERICはインドにて撮影の『Eye of the Vortex』と展覧会「GOOD LUCK HONG KONG」。林典子は、YP2013でも大きな話題となった『キルギスの誘拐結婚』です。
ERICのインド撮影の作品は、実は2012年KMoPAにて一部をすでに展示していました。ストロボスコープを発明し、肉眼では見えない動きの世界をとらえたハロルド・エジャートン博士、閃光電球を多用して夜間に蒸気機関車を撮影したO.ウィンストン・リンク、そして日中シンクロで“人間”を浮かび上がらせるERIC。3人の作品を展示した「Flsah! Flash! Flash!」展です。
YPにて2003年度から2010年まで毎年収蔵したERICの《衝動と好奇心》(2002-03)《日本ファミリー》(2004)《Close up》(2003-05)《everywehere》(2001-04)《一日と永遠》(2002)《coldsnap》(2006)《中国好運》(2007-08)など全34点に加えて、新作を展示したのです。新作は、タイの洪水を撮影した《LIVE WATER》と撮影を始めたばかりのインドでした。昨年出版された『Eye of the Vortex』では、そこには「Flash!」展にて展示された作品も含まれ、ERICが撮ろうとしたインドの全貌が見えています。これまでは、群衆の中から人型を抜き取るようにフラッシュをシンクロさせていたのが、インドでは、カメラを中判から35ミリに変え、群衆を群衆としてとらえていたのです。「インドではまず群衆に巻き込まれる。しかもこの群衆は、法の下の秩序ではなく、言わば、人の野性によって群れをなしている。」というERICのインドは、人と色で溢れかえり、人々の視線と息づかいのエネルギーでむせかえる従来のインドの写真とは異なる、ERICならではのストリートスナップの真骨頂がそこにあります。
林典子は、2010年度から11,12,13年度まで《HIV/無音の世界に生きる?ボンヘイのストーリー》(2009)《パキスタン:酸に焼かれた人生 セイダのストーリー》(2010)《東日本大震災-混沌と静寂》(2011)などを収蔵。『キルギスの誘拐結婚』は、大きな衝撃をもたらし、ヴィザ・プール・リマージュでの受賞をはじめ、林の仕事が世界的に評価されました。林が当館のYPに応募できるのはあと3年間可能です。彼女が次に何を考え、何を撮るのか?にこれまで以上に注目していきたいと思います。
二人の活動は、滑走路から浮上した飛行機が、今まさに全力で高度を上げているようにも見えます。YPには、ERICや林典子のような写真家が、35歳になるまで毎年繰り返して応募しています。YP展は、毎年ご覧いただくことによって、彼らの変化や成長を目の当たりにすることができます。ぜひ継続してご覧いただき、彼らの発するメッセージに耳を傾けていただければ幸いです。