K・MoPAの基本理念のひとつである<永遠のプラチナ・プリント>。プラチナ・プリント技法による作品の収集・展示と技法の継承を行って参りました。ほぼ毎年1回、ワークショップを開催し、開館20周年の本年で第20回目となりました。これまでに、延べ約200名の方が受講されています。「プラチナ・プリント収蔵作品展:永遠の時、きらめく」を会期中の11月7日、8日の2日間にわたり開催いたしました。その内容をご紹介いたします。
<プラチナ・プリント作品鑑賞>
本ワークショップの講師は、日本で最初にこの手塗りの技法をマスターされた細江賢治氏。今回の参加者は6名で、写真家、芸術家、彫刻家、大学教授など多彩な顔ぶれとなりました。1日目の午前中、まずはプラチナ・プリントの歴史をひも解くべく、講師の解説を聞きながら、展覧会を見ていきました。 K・MoPAの基本理念のひとつである<永遠のプラチナ・プリント>。プラチナ・プリント技法による作品の収集・展示と技法の継承を行って参りました。ほぼ毎年1回、ワークショップを開催し、開館20周年の本年で第20回目となりました。これまでに、延べ約200名の方が受講されています。「プラチナ・プリント収蔵作品展:永遠の時、きらめく」を会期中の11月7日、8日の2日間にわたり開催いたしました。その内容をご紹介いたします。
<プラチナ・プリント作品鑑賞>
本ワークショップの講師は、日本で最初にこの手塗りの技法をマスターされた細江賢治氏。今回の参加者は6名で、写真家、芸術家、彫刻家、大学教授など多彩な顔ぶれとなりました。1日目の午前中、まずはプラチナ・プリントの歴史をひも解くべく、講師の解説を聞きながら、展覧会を見ていきました。 まず、プラチナ・プリント技法を発明したウィリアム・ウリス・ジュニアの作品(1878年)から始まり、20世紀初頭のピクトリアリズム作品、そして近・現代まで多様な写真表現をじっくりと鑑賞しました。また、講師が持参くださった作品を鑑賞。こちらはガラス無しでプリントを間近に見られるまたとない機会でした。 本展でも展示している志鎌猛氏は、このワークショップを受講したことを機にプラチナ・プリント作品に目覚め、今や欧米にて広く活躍されています。ぜひ“第二の志鎌さん”を目指しいて欲しい、と講師からも思わず応援コメントが。 展覧会をご覧になるため10月来館された志鎌氏とご自身の作品です。展示作品は、森をテーマに撮影を始め、初めて「写った」と確信した一枚だったと言います。
<撮影とプラチナ・プリント用ネガ作り>
次にプラチナ・プリント用のネガを作るため、参加者のポートレイトを撮影します。本ワークショップで使うネガは4×5インチのフィルムです。講師が4×5の大型カメラで2枚撮影し、このネガからプラチナ・プリントを制作します。プラチナ・プリントは100年、200年残ると聞いて、みなさんが緊張ぎみになるのも仕方ありませんね。 ポートレイト撮影風景です。
<フィルム現像>
フィルム現像はジョボ(Jobo)という現像処理機を使用しています。黒い円筒形のタンクに4×5フィルムを入れ、薬品を注入し、モーターでタンクを回転させて現像処理を行います。 一度に4×5フィルムは10枚まで、同時に液温管理、攪拌、処理時間を厳密に行うことができる、優れたものですが、残念ながら現在は販売されておりません。 現像中のジョボです。
<ネガのチェック>
現像が終わり、ネガをチェックしています。プラチナ・プリントは、感度が低いため、通常の銀塩プリント用よりも濃度の濃い(コントラストの高い)ネガを作ります。
<印画紙を作る> ガが出来上がったら、プラチナ・プリントの印画紙を作ります。印画紙に使用する紙(支持紙)は、版画用紙、水彩用紙などを使います。4×5インチのネガより大きめの用紙上に、薬品を塗布する位置を、鉛筆で印します。そして、紙の水分をとばすため、ドライヤーの温風を当てて乾かします。
<乳剤を塗布>
ビーカーにスポイトで、必要な量の薬品を入れます。薬品は「プラチナ・プリント・キット」として市販されているものを使用し、ネガの濃度や好みの色調に合わせて調合します。プラチナのみですと赤みの無い灰色の色調となりますが、パラジウムを混ぜると茶褐色となります。この液体に直接触れると被れる危険があるため、薬品の扱いには炊事用のゴム手袋が必需品です。 先ほどドライヤーで乾燥させた用紙に薬品を塗布していきます。紙が吸ってしまう前に、サッサッと力を入れずに、ムラの出ないよう手早く塗っていきます。 塗布後10分間自然乾燥させてからドライヤーで表裏を乾燥させます。この際にはガスが出るので、マスクをしてドライヤーをかけます。(本ワークショップのプリントは小さいので、リスクは少ないのですが、念のためマスクをしていただいております)
<露光>
プラチナ・プリントは鉄塩の感光性を利用します。銀塩印画紙に比べて感度が低いため、引伸ばしはできません。また、紫外線にしか感光しないため、本ワークショップでは日焼け用の器具(サンライト)を使って露光しています。印画紙の上にネガを置き、ガラスを乗せて密着させ、紫外線で5分前後露光します。通常の暗室は、安全光(赤ランプ)での作業ですが、プラチナ・プリントは感度が低いため、それよりも明るい照明下で作業することができます。
<プリント現像>
バット(皿)に、露光が終わった印画紙の表を上にして置き、現像液を一気にかけます。 通常、モノクロ印画紙はじわりと画像が現れるのに対して、プラチナ・プリントは、現像液をかけると一瞬にして画像が現れます。右側の写真をご覧ください。まだ、現像液が注ぎ終わってないのに画像が現れています。この際、現像液が目に入ると大変危険ですので、ゴーグルと手袋をして作業をします。 2分間の現像後、銀塩写真の定着にあたる「洗浄作業」を3回行います。クエン酸で洗浄することにより未露光の鉄塩を洗い流します。洗浄後に「水洗」、「乾燥」してプリントの完成です。乾燥すると調子が変わるため、必ず乾燥させてから、講師が仕上がりをチェックし、2枚目の薬品の調合割合や露光時間の変更を指示してから次のプリントに取りかかります。
<さいごに>
本ワークショップでは、紙の種類を変えて、合計4枚のプリントを仕上げました。最後に講師が講評し、参加者の感想を伺いました。早速、ご自宅でプリントするために材料を注文された方や、「プラチナ・プリントが自分にどういう意味があるのか考えて、この技法が新しい世界を開いてくれるのか試してみたい。」「印画紙を自分で作れるなんて夢のよう。ネガをどう作るかがポイント。 必ず自分でもやります。」「写真を現像したのは初めて。新しいことにチャレンジすることは本当に面白い!」「プラチナ・プリントで版画の問題が解決しました。版画の技術を活かせる技法だと思います。」など、非常に積極的な感想をいただきました。
プラチナ・プリント・ワークショップのお申込みは当館ホームページで随時受け付けております。定員に近づきましたら、当館より開催日程をお知らせいたします。次回は是非やってみたいという方は、どうぞホームページからお申し込みください。現像は初めてという方でも、講師が丁寧に指導いたします。「故(ふる)きを温(たず)ね新しきを知る」と言いますが、普段の撮影はスマホで、という方も、19世紀の写真技法によって出来上がった陰影の美しいご自身のポートレイトをご覧になると、1枚の写真に対する思いが変わるかもしれません。皆様のご参加をお待ちしております。