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2013年度ヤング・ポートフォリオ
Young Portfolio Acquisitions 2013 |
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選考委員:川田喜久治、瀬戸正人、細江英公(館長)
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マリヤ・コジャノヴァ(Mariya KOZHANOVA/ロシア、 1986) MaidI, 2012
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開催概要 |
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展覧会名 |
2013年度ヤング・ポートフォリオ |
会 期 |
2014年3月21日(金・祝)~6月29日(日) |
休館日 |
毎週火曜日(祝日の場合は開館)、 3月20日(木)までは冬期休館 |
会 場 |
清里フォトアートミュージアム |
開館時間 |
10:00~18:00(入館は閉館30分前まで) |
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ヤング・ポートフォリオ(YP)とは、毎年35歳以下を対象に公募を行い、選考ののち、優れた作品を当館の収蔵作品として購入する活動です。この募集は一度限りの賞を与えるコンテストではなく、情熱を持って自分の作品に体当たりをしていくような、表現意欲の高い作品を購入することによって、若い作家に勇気を与え、支援して行きたいと考えています。
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■本展覧会について |
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ヤング・ポートフォリオ(以下YP)が通常のコンテストと異なる特徴は、35歳になるまで何度でも応募することができ、何年にもわたって収蔵することが可能だということです。選考では、表現意欲の高さ、将来の力強い展開を予感させる創造性豊かな作品であることを重視します。私たちは、既存の枠にはまらないオリジナリティを求めて闘っている青年の作品こそが、時代を切り拓く力を秘めていると考えます。美術館が作品を購入することによって、若い作家に勇気を与え、作品の収集、展覧会、データベース化、出版活動などを通して若い作家を広く社会に紹介いたします。
1995年の第1回から2013年度(第19回)募集まで、世界74カ国から10万枚を超える応募があり、収蔵した作品の総枚数は698人の写真家による5296枚(44カ国)となりました。2013年度は、28名による189枚を収蔵。本展にてすべて展示いたします。さまざまな土地、視点、問題意識、表現方法 . 個々の写真家のみずみずしい感性が溢れています。加えて、選考委員3名のYP時代の作品15点も同時に展示いたします。YPは、世界の若いクリエーターからチャレンジを受ける場でありたい、そして若木が伸びゆくために強い根を育む場となりたいと願っています。
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■2013年度ヤング・ポートフォリオ(第19回)データ |
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2013年度選考委員:川田喜久治、瀬戸正人、細江英公(館長)
作品募集期間:2013年4月15日~5月15日
応募者総数:243名(世界22カ国より)
応募総点数:5411枚
購入枚数:189枚
購入者数:28名(国内15名・海外13名)
●1995年度から2013年度までに作品を収蔵した作家の総数:698名
総作品枚数:5296枚
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■2013年度の見どころ |
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●日本人初の受賞:林典子《キルギスの誘拐結婚》
林典子(1983、30歳)は、世界最大規模の写真ジャーナリズムの祭典「第25回ビザ・プール・リマージュ」(Visa pour l’image)において、報道写真企画部門の最高賞にあたる「ビザ・ドール(金賞)」を日本人として初受賞。その対象となった作品《キルギスの誘拐結婚》(11枚収蔵)を展示いたします。
・林典子は、2012年7月から11月までの4ヶ月間、キルギスのいくつかの村を訪ね、誘拐されて結婚した10代から80代の夫婦約25組を取材。2013年1月には誘拐犯への禁固刑が3年から最長10年と延びたものの、自殺に追い込まれたり、家庭内暴力に苦しむ女性は多数です。
・林典子は、1983年神奈川県生まれ。アメリカの大学で国際政治学、平和・紛争学を専攻。卒業後、2006-07年に仕事をしたガンビア共和国の新聞社で写真が必要となり、独学で撮影を始めます。それからわずか数年の間に見事な成長を遂げ、今後の活躍が非常に楽しみなフォト・ジャーナリストです。
常に社会の弱者に寄り添い、苦しむ人々の現実を、女性ならではの距離で捉え、強く訴えかけています。 当館は、林の作品を、2010年から4年連続して収蔵しています。
林 典子《キルギス さらわれる花嫁:町を友人と散歩していた時に、突然車に押し込まれた。大学生のファリーダ(20歳)。
男の家に連れて来られると、車から降ろされ、男の親族に連れられて家に入っていく。》2012年 |
林 典子《キルギスの誘拐結婚:前日に誘拐で結婚したアフマットとディナラ。結婚式のセレモニーで祈りを捧げる》2012年
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●世界中から愛されている:伊原美代子《みさおとふくまる》
・ 伊原美代子が祖母のみさおさんを撮り始めて13年。現在88歳のみさおさんが、自宅の納屋で子猫を見つけたのは9年前。子猫は「福の神様が来て、全てが丸く治まるように」と「ふくまる」と名づけられました。耳の遠くなったおばあちゃんと生まれつき耳の不自由なふくまるはいつも見つめ合って、お互いを感じているそうです。「今日もいい日だね、ふくまる」と話しかけ、共に暮らす毎日を、四季折々の里山の美しさとともにとらえた《みさおとふくまる》。
・このシリーズは“Misao the Big Mama and Fukumaru the Cat”と英訳され、海外のウェブサイトでも写真集が人気発売中。世界中に笑顔をもたらしています。
伊原美代子《みさおとふくまる》2012(15枚収蔵)
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●2013年ソウル・フォトがきっかけ
ソウル・フォトとは、毎年5万人を動員する大規模なフォトフェスティバルです。若手写真家の紹介に特に力を注いでいるソウル・フォトからのご招待で、当館はヤング・ポートフォリオを紹介するブースに、YP作品28点を展示し、ポートフォリオ・レビュー(作家が作品を持ち込み、キュレーターなどが直接講評をすること)などを行いました。
その結果、今年は韓国からの応募が一気に増加し、50人を超す応募者がありました。選考の結果、3人の韓国人作家の作品を収蔵いたしました。
・韓国では、歴史は異なる世代によって書き直されるべきという言い伝えがあるそうですが、この作品は、改築された歴史的建築物に昔の姿を投影し、過去と現在を同時に一枚の写真に収めています。それによって歴史的遺産である場所が、デジャヴュのようでもあり、新鮮にも見えることに惹き付けられると写真家は言います。日々大きな変貌を遂げている韓国の都市。アイデンティティに対する問いも常に存在し続けているのです。
アン・ソンソク AHN Sungseok(韓国、1985) Historic present 009, 2009
・“whispering”は、女性写真家が20代の女性たちと交わした性に関する会話の中から、彼女たちの感じた居心地の悪さや記憶を再構成しています。
キム・ジンヒー KIM Jinhee(韓国、1985) whisper(ing)-002, 2009
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・“Dynamic Korea!” 韓国人とは?とにかくファッションと色にこだわるのだとか。特に色はとても大切な要素であり、韓国人がひとつにまとまる、いわばグループ・カルチャーの統一力を表すもの。アジュマ(中年女性)、ノガダ(工事現場で働く人々)、シジャン(市場で働く人々)などのグループに見るファッションを、作家は「新鮮で、変わっていて、自然な力を生み出している」と記しています。
パク・グリーン PAK Green(韓国、1985)
Dynamic Korea! _ Colorful Daegu #04, 2012
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●若い作家たち
2013年度初収蔵となった作家のうち、最も年齢の若いのは廣田千祐貴(日本、1987)26歳、坂口真理子(日本、1987)26歳、マリヤ・コジャノヴァ(ロシア、1986、表紙)27歳の3人です。
・坂口真理子の《訪々入浴百景》は、キッチンやリビングなど様々な場所に木製の風呂桶を持ち込んだ、何とも不思議なセルフポートレイト作品です。プライベートとパブリック、見ることや見られることなど、様々な関係性が交錯したイメージを生み出すことを試みています。
坂口真理子《訪々入浴百景》2010
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・ロシアのマリヤ・コジャノヴァ(表紙)の作品の背景には、ロシア社会が混沌としていた時代に生きる原動力となっていた神話や信念が破壊され、 ロシアの若い世代は、いわばイデオロギー的に裸の状態であり、 アイデンティティの基盤となるものがなく、日本のコスプレやアニメのような幻想的な世界に逃げ込む人も多いという現実があるというのです。
●今年でヤング・ポートフォリオを“卒業”する作家たち |
今年35歳(1978年生まれ)でヤング・ポートフォリオを“卒業”となるのは、半田彰太郎とアダム・パンチュクの二人です。
半田彰太郎は、3回収蔵で全14枚、パンチュクは4年連続で全18枚収蔵しています。本展では、この2人の作家の収蔵作品を一堂に展示することによって、ヤング・ポートフォリオの大きな特徴である〈35歳まで何度でも応募ができる〉ことが、すなわち<35歳の巣立ちの時まで、継続して見守る>意味を持つことなどをご理解いただけるかと思います。
半田彰太郎《The Workin’ Car》2004(2006年度収蔵)
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半田彰太郎《The Rolling Machines》2006(2013年度収蔵)
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アダム・パンチュク Very Hidden People_2, 2010(2011年収蔵) |
アダム・パンチュク Karczeby-03, 2008(2013年度収蔵) |
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■2013年度ヤング・ポートフォリオ(第19回)作品購入作家名一覧
【 】内はヤング・ポートフォリオ購入年度。全28名のうち、15名は過去にも作品を収蔵しています。
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1 |
アン・ソンソク(韓国、1985)AHN Sungseok |
【2013】 |
2 |
Ake(日本、1979)Ake |
【2013】 |
3 |
K.M.アサド(バングラデシュ、1983)K.M. ASAD |
【2009,2010,2011,2012,2013】 |
4 |
カシア&バンジャマン・コーエン(ポーランド/フランス、1980/1979)
Kasia and Benjamin COHEN |
【2010,2011, 2013】 |
5 |
半田彰太郎(日本、1978)HANDA Shotaro |
【2006,2007,2013】 |
6 |
林 典子(日本、1983)HAYASHI Noriko |
【2010,2011,2012,2013】 |
7 |
廣田千祐貴(日本、1987)HIROTA Chiyuki |
【2013】 |
8 |
伊原美代子(日本、1981) IHARA Miyoko |
【2004, 2010,2013】 |
9 |
今村拓馬(日本、1980)IMAMURA Takuma |
【2004,2005,2006,2007,2009,2010,2012,2013】 |
10 |
板花進矢(日本、1980) ITAHANA Shinya |
【2013】 |
11 |
キム・ジンヒー(韓国、1985) KIM Jinhee |
【2013】 |
12 |
木村 肇(日本、1982)KIMURA Hajime |
【2013】 |
13 |
パク・グリーン(韓国、1985)PAK Green |
【2013】 |
14 |
古賀絵里子(日本、1980)KOGA Eriko |
【2006,2009,2010,2013】 |
15 |
マリヤ・コジャノヴァ(ロシア、1986)Mariya KOZHANOVA |
【2013】 |
16 |
根本真一郎(日本、1981)NEMOTO Shinichiro |
【2013】 |
17 |
牧野智晃(日本、1980)MAKINO Tomoaki |
【2002,2011, 2013】 |
18 |
アダム・パンチュク(ポーランド、1978)Adam PANCZUK |
【2010,2011, 2012,2013】 |
19 |
プラシャンタ・クマール・サハ(バングラデシュ、1983)PRASHANTA Kumar Saha |
【2012, 2013】 |
20 |
ナンディタ・ラマン(インド、1980)Nandita RAMAN |
【2013】 |
21 |
プローバル・ラシッド(バングラデシュ、1979)Probal RASHID |
【2013】 |
22 |
坂口真理子(日本、1987)SAKAGUCHI Mariko |
【2013】 |
23 |
下薗詠子(日本、1979)SHIMOZONO Eiko |
【1998, 2001,2013】 |
24 |
田口 昇(日本、1980)TAGUCHI Noboru |
【2013】 |
25 |
高橋尚子(日本、1984)TAKAHASHI Naoko |
【2011, 2012,2013】 |
26 |
ヤン・ヴァラ(チェコ、1983)Jan VALA |
【2012, 2013】 |
27 |
ハンネ・ファン・デル・ワウデ(オランダ、1982)Hanne VAN DER WOUDE |
【2009,2013】 |
28 |
楊 哲一(台湾、1981)YANG Che-Yi |
【2007,2013】 |
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YPデータベースを公開 |
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第一弾として、2006年度から2012年度までのデータを公開中です。第二弾として1995年度から2005年度までを2014年1月に公開いたします。作品のデータのほか、作家の略歴、作品についてのアーティスト・ステートメントも掲載しています。作家名、収蔵年、国籍などで検索することができます。今後さらに撮影地やキーワードによる検索も可能とする予定です。過去20年にわたる世界の若手写真家の作品を、様々な調査・研究の対象としてご利用頂ければ幸いです。
http://www.kmopa.com ->「ヤング・ポートフォリオとは?」
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【YP 公開レセプション&ギャラリートーク】
●2014年5月24日(土)午後2時~4時
出演:川田喜久治、瀬戸正人、細江英公(館長)
(入館料のみ / 定員なし *友の会・会員は無料)
会場:清里フォトアートミュージアム 要予約
(写真左:昨年の会にて自作を語る林典子氏、写真右:左から松本真里氏、選考委員・川田喜久治氏)
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