不安定な心の揺らぎをそのままに、カメラを持って旅へ出る ー 多くの若者にとって、日本という空間を離れて異文化へ飛び込み、初めて出会う非日常の衝撃をそのままに記録することが、現実を見据え、「私」の立っている場所を確認していく作業なのかもしれません。一方で、あえて日常生活の場で、写真を撮るという表現行為を通して自分自身の再発見を試みる、コンパクト・カメラで日記を綴るようなプライベートなまなざし。または時代のアクチュアリティを描きながら自分自身の存在を確認し発信する。さらに、実際には存在しない仮想の風景を自由に映像化する。表現や手法はさまざまですが、どこかにまだ未消化のエネルギーと生々しさの残るこれらの作品は、今後の発展の可能性を秘めた強い力を見せています。特に30歳前後は、その後の方向性を示唆する重要な時期であり、作品には、今後の作家活動の“根”となる要素が含まれているのです。それぞれの作家の今後の軌跡を想像しつつ見るのも、ヤング・ポートフォリオ展のひとつの見方ではないでしょうか。
1999年度の募集は本年5月に行い、926名より2246点(6644枚)の応募がありました。99年度選考委員、今井寿恵、川田喜久治、細江英公(館長)の3名による選考の結果、82名による作品100点(286枚)を収蔵作品として購入いたしました。本年度は海外からの応募数がさらに増加し、K*MoPAヤング・ポートフォリオは徐々に世界への拡がりを見せ始めています。私たちは「ヤング・ポートフォリオ」が、日本の、そして世界の「コンテンポラリー」展の場となっていくことを期待しています。
「1999年度ヤング・ポートフォリオ」展では、約250点を展示いたします。
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