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西村豊「森の妖精 ヤマネ」


西村豊「森の妖精 ヤマネ」
Dormice: The Forest Fays photographs by Yutaka Nishimura

会 期 :2007年6月23日(土)〜2008年1月27日(日)まで 
休館日 : 毎週火曜日(祝日の場合は開館)

年末年始休休館:2007年12月25日〜2008年1月11日
展示替え休館:2008年1月28日(月)〜2月23日(金)


主催: 清里フォトアートミュージアム
     Kiyosato Museum of Photographic Arts(K'MoPA)
後援: 山梨県教育委員会、北杜市
特別協力: キープやまねミュージアム

[開催趣旨]


清里フォトアートミュージアムは、三つの基本理念「生命(いのち)あるものへの共感」「永遠のプラチナ・プリント」「若い力の写真:ヤング・ポートフォリオ」に基づき、収集・展示を行なっております。

この度、清里フォトアートミュージアムにて、西村豊「森の妖精 ヤマネ」を開催いたします。ヤマネは、頭から尻尾の先までで約12センチ前後、一属一種、げっ歯目ヤマネ科のほ乳類です。日本特産種で、本州、四国、九州の山林に生息し、夜行性で、おもに樹上で生活します。冬になると体温を零度近くまで下げて、約6ヵ月間木の洞や地中、枯葉の下で完全に冬眠します。


西村豊
「私の姿は、見えまい。」とでも思っているのだろうか。本人はこれでも隠れているつもりらしい。なんだか、私は遊ばれているように思え、思わず笑ってしまった。
1982年 © NISHIMURA Yutaka
[禁無断掲載]

西村豊
アケビの実が熟す頃、毎年撮影に行った。しかし、50 センチ程先にいるのがわかっていても、葉っぱやアケビの実に隠れてしまい、ほとんど見ることができなかった。そして、やっとこの写真が撮れたのは、7年目の秋だった。
1986年© NISHIMURA Yutaka
[禁無断掲載]

自然写真家の西村豊氏は、1977年初夏に八ヶ岳山中でヤマネに出遭いました。そのボタンのような、黒く大きな澄んだ目に魅了され、以来“森の妖精”ヤマネの姿を探し求めます。そして姿を見ることすら困難なヤマネの撮影に約20年を費やし、そのユーモラスで愛らしいしぐさや食性、子育てのようすなど、ヤマネの生態を生き生きと物語る貴重な撮影に成功しました。
1997年、当館は西村氏の写真展「ヤマネ.森に棲むもの」を開催しました。国の天然記念物に指定されているヤマネは、森の減少とともに生息域が脅かされつつありました。それから10年の歳月を経た本年、ヤマネの存在は広く知られるところとなりましたが、環境の変化に伴い、人家に姿をみせたり、人間の仕掛ける殺鼠剤や粘着のネズミ捕りの犠牲となることもしばしばです。



西村豊
白樺の木にやってきたものの食べる物が見付けられないのか、しきりに周囲の臭いをかいでいる。それに対して 私は、やっとサルノコシカケに乗るヤマネを撮影することが出来た。5年目の事である。
1984年 © NISHIMURA Yutaka

[禁無断掲載]

西村豊
日本の野生動物に、眠る姿がこれほど表情豊かな生きものはいるのだろうか。この日も思わず手を合わせたくなる姿である。それはまるで、昔話に出てくる雪の綿帽子をかぶるお地蔵様のように思われてならなかった。
1986年 © NISHIMURA Yutaka
[禁無断掲載]

ヤマネは、私たち八ヶ岳山麓に生きる者にとって自然の象徴であり、大切な隣人です。八ヶ岳の森を知り尽くした西村氏が近年とらえた「ヤマネ」の姿をみつめ、もう一歩踏み込んだ問題意識をもって、ヤマネの棲む森との共存、自然と共に暮らす人間のルールという核心にふれるときが“今”ではないか−と、考えます。
ヤマネを知ること − それは今、温暖化という地球規模の問題に直面する私たちが100年後の子どもたちに豊かな自然を残せるかどうかということと、かけ離れたことではないようです。



西村豊
ヤマネの冬眠は、大きな樹に開いた洞(うろ)などを利用するが、近年その樹は減り、枯れ葉の下で冬眠する方が多いようである。ヤマネたちも、その環境にあわせてスタイルを変えているように思える。
1990年 © NISHIMURA Yutaka
[禁無断掲載]


西村豊
5月の中旬、久しぶりにヤマネを見かけた。この頃、食べ物はまだ少ない。そんな中で、桜の枝に逆さにぶら下がりながら、甘い蜜をなめていた。
1984年 © NISHIMURA Yutaka
[禁無断掲載]


本展では、当館のコレクションをはじめ未発表の作品を含む約90点を展示します。8月には、西村豊氏によるギャラリートークを行います。夏休みを利用し、小・中学生、教育に携わる多くの方々にもご高覧いただきたいと思います。ヤマネに対する理解をより深め、自然の営みや環境問題についても楽しみながら学べる機会となれば幸いです。



西村豊
午後3時頃。この直径500 円玉程の巣穴に到着。巣穴入口から3メートルの所で、そっとカメラをセットし待った。どのくらい待っただろうか、突然入口からピョコ!その瞬間、私に気付いたヤマネは、ピクリとも動かなくなった。まるで「私は、ヤマネではありませんよ。苔です。」とでも言っているようだった。
1985年 © NISHIMURA Yutaka
[禁無断掲載]


西村豊
「やっとこさ登れたよ」巣穴を出て、すぐそばの花に登る子供。ひょっとしたら、初登頂かもね。
2003年 © NISHIMURA Yutaka
[禁無断掲載]


●西村豊 プロフィール
1949年 京都府 京都市生まれ
1972年 長野県に移り住む。
1977年 自然写真家として独立(ネイチャーフォト・プロダクション代表)
現在、長野県諏訪郡富士見町に在住、フリーの自然写真家として国内外で活動する。美術図書、自然雑誌、広告、動物図鑑への作品発表のほかテレビへの出演など活動は多岐にわたる。各地方の保育園から大学までの学校、企業などで社会人講師としても活躍。また、ヤマネ(国指定・天然記念物、準絶滅危惧種)やホンドギツネの研究者としても知られ、「八ケ岳中信地区国定公園」地区と、「国指定・特別名勝特別地区天然記念物・上高地」において、文化庁・環境庁・林野庁の許可を得て4年間調査を行なった。近作の『干し柿』(あかね書房)が第53回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(小学校中学年の部)に指定される。
(社)日本写真家協会会員

★図録『ヤマネ.森に棲むもの』西村豊 / 1250円(税込み)47頁 カラー写真36点
1997年当館にて開催した「ヤマネ.森に棲むもの」展に併せオリジナル図録を作成。帯にはアニメーション映画の巨匠・宮崎駿監督による推薦文を掲載。ポストカード8種と共に当館ミュージアムショップとオンラインショップにて販売中です。


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