西村 豊「ヤマネー森に棲むもの」展
豊かな森を象徴する「森の妖精」ヤマネ。― 国の天然記念物に指定されているヤマネは、一属一種のげっ歯目ヤマネ科の小ほ乳類で、体長はわずか約6センチ、尾長は約5センチ。手のひらに乗るほどの大きさです。日本特産種で、生息地は本州、四国、九州の山林です。夜行性で、おもに樹上で生活し、冬になると体温を零度近くまで下げて、完全に冬眠します。とても小さく、夜行性で、しかも深い木の洞や地中で約6か月間冬眠してしまうので、ヤマネを見ること自体非常に困難なのです。
ヤマネと出会って18年余り、西村 豊氏は八ヶ岳山麓の森でヤマネの姿を追い、見続けてきました。ヤマネの顔を見れば、八ヶ岳山麓のどこの林の「ヤマネさん」で、どんな性格なのかもわかるそうです。母ヤマネは、人間の母親と変わらぬ愛情を注ぎ、厳しい自然に生きるために必要なことをわずか2か月の間に覚えていく子供たち。ときにユーモア溢れる愛くるしい表情を見せてくれます。清里では、人けのない別荘に入り込んで冬眠していたり、子育てをしていたという声も聞かれます。
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日本列島は、多くのほ乳類が生息する自然の豊かな島国です。と同時にヒトは、国土の9割を占める森との共存を強いられています。八ヶ岳南麓の豊かな自然に囲まれた場所に立つ清里フォトアートミュージアムも、まさに他の動物たちと森を共有しているのです。むしろ、森に入って来た私たちが彼らの場所を”間借り”している立場なのかもしれません。ヤマネは、近年森の減少とともに生活域が脅かされ、その数は確かに減っています。私たちは八ヶ岳の森に抱かれ、またヤマネの棲む森に立つ写真美術館として、西村氏の写真から、「森の妖精」ヤマネの愛らしさだけでなく、生命の尊さ、森の大切さを感じとっていただければと思います。また、十分にその力のある作品群であると考えています。
清里では、山梨県による有料道路の建設が進められる一方で、ヤマネが生息する森の環境を少しでも維持するために、地下にトンネルを掘る、またヤマネが森を横切るための橋を作るなど、様々な試みがなされています。それが十分かどうかは議論の余地があるかと思われますが、今後も理想的なかたちでヤマネの調査研究が進み、ゆっくりとした保護の足どりが少しでも加速することを私たちは希望してやみません。
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展覧会では、「ヤマネ―森に遊ぶ」(講談社)のシリーズから、また未発表の新作、
あわせて77点を展示いたします。
この展覧会を期に、清里フォトアートミュージアムは西村 豊「ヤマネ―森に棲むもの」(清里フォトアートミュージアム/Bee
Books)を出版いたします。
氏のヤマネとの出会いから、ヤマネとのかかわりの中で学んだこと、ヤマネの生態、そしてヤマネをとおして訴えたい自然の豊かな世界と、その保存について、次代を担う子供たちにも考えてもらいたい。”かわいい”ヤマネだけではなく、厳しい自然に立ち向かう”りりしい”存在である世界も紹介し、「共に生きる」動物の存在を慈しむ気持ちを子供たちに育んでもらいたいというメッセージが込められています。(カラー、48ページ、1250円)
K・MoPA トーク・セッション
- in 東京
日時:1997年11月27日(木)
午後6時30分〜 8時30分 定員:150名、入場無料
場所:東京都写真美術館1階ホール(恵比寿ガーデンプレイス内)
パネリスト:西村 豊、夢枕 獏(作家) 、細江 英公(館長)
in 清里
日時:1997年11月22日(土)
午後2時00分〜 4時00分 定員:120名、入場無料、
場所:清里フォトアートミュージアム・音楽堂
パネリスト:西村 豊、高樹 澪(女優)、細江英公(館長)
*入場料は無料ですが、K・MoPA友の会会員を優先させていただきます。
イベントご案内
日時:12月13日(土)午前10時30分〜12時00分/K・MoPAチケットカウンター集合
●西村 豊さんの「ヤマネってなあに?」
ヤマネのことをもっと知りたい、自然を楽しみたい・・・・そんな方は、西村さんと一緒に自然豊かなK・MoPA周辺を歩いたり、西村さんの解説で作品展をご覧ください。子供も大人も大歓迎。参加無料です。
日時:12月20日(土)午前12時30分〜1時30分/K・MoPAレストラン(ラ・プリミエール)にて
西村 豊さんを囲んでのひとあし早いクリスマス会。この日だけは、子供はもちろん、大人もちょっと豪華な「お子様ランチ」が食べられる!特別メニューで食事をしながら、西村さんのゆかいなお話、K・MoPAからの小さなプレゼントも。あとは当日のお楽しみ・・・。
●参加費 1000円(お食事&ドリンク代)/ご予約は不要です。
●12:00までにレストラン入口にお集まりください。
*お問い合わせは0551−48−5599 K・MoPAチケットカウンタまで
●毎月第2・第4土曜日は親子無料デー
小学6年生までのお子様をお連れの方は、入場無料とさせて頂きます。
●年末年始休館:12月30日(火)〜1月3日(土)