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ウィン・バロック「そこに光あれ」
Wynn Bullock, Let There Be Light |
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ウィン・バロック「そこに光あれ」
Wynn Bullock, Let There Be Light
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会 期 :2006年12月9日(土)〜2007年2月12日(月・祝) |
休館日 : 毎週火曜日、12/25〜1/5 会期中の開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
*冬期(12月〜3月)は17:00閉館となります
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主催: 清里フォトアートミュージアム
Kiyosato Museum of Photographic Arts(K'MoPA) |
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[開催趣旨]
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清里フォトアートミュージアムは、三つの基本理念 1)生命(いのち)あるものへの共感、2)永遠のプラチナ・プリント、3)若い力の写真:ヤング・ポートフォリオに基づき、収集・展示を行っています。本展は、当館の約6,000点の収蔵作品のなかから、アメリカを代表する写真家のひとりであるウィン・バロックの作品を約100点展示いたします。自然の神秘を精緻なモノクロ印画で表現したバロックの世界をご紹介いたします。
“カリフォルニア派”写真家の代表的な一人として知られ、森や海などの自然を捉えたリリカルな作品で知られるウィン・バロック。自然を多く被写体にしたと同時に自然のなかに少女や女性のヌードを配したイメージも多く残しています。なかでも人々に強く印象づけた作品が「森の中の子供」(Child in Forest, 1951年)でした。深い森の柔らかな光を浴びて、地中から静かに涌き出す清らかな水のように横たわる少女─。バロックは「森に人物を配置することは、互いに異なる事象、人間の事象と自然の事象をおくことになるが、人間の事象もまた結局は自然である」と語り、自然の底知れぬ神秘をめざした考え方を、極めてシンプルな写真表現にて実現しています。
ウィン・バロック「流木」1951年
Wynn Bullock, Driftwood © 1951/2006 Bullock Family Photography LLC,
All Rights Reserved [禁無断掲載]
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ウィン・バロック「ペブル・ビーチ」1970年
Wynn Bullock, Pebble Beach © 1970/2006 Bullock Family Photography
LLC, All Rights Reserved [禁無断掲載]
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ウィン・バロックは、1902年シカゴに生まれました。コロンビア大学、ウエスト・ヴァージニア大学にて音楽を学び、プロのテノール歌手としてブロードウェイで4年間活躍した後、パリ、ミラノ、ベルリンに留学、3年を過ごしました。パリでは、印象派、後期印象派絵画の光と色の美しさに刺激を受けます。また、カメラを購入し、自分で写真を撮って焼くようになります。
パリの舞台デビューは好評を得ながらも、声に限界を感じ始めたバロックは、1930年ヨーロッパから帰国しました。折しもアメリカは大恐慌。ウエスト・ヴァージニアで家の不動産管理の仕事につきますが、写真は趣味で続けていました。この頃、言語の記号的性質を追求する意味論哲学者、アルフレッド・コージブスキーの影響も受けています。やがて、不動産の仕事で立て直し、カリフォルニアに向かいます。判事であった母親の影響もあって法律を学びますが続かず、マン・レイやハンガリー出身の造形作家モホリ=ナギらの写真にふれて視覚芸術に興味を持ちます。写真家になる決意をし、1938年ロサンゼルスのアート・センター・スクールに入学。絵画の影響を強く受けていたこともあり、ストレートな写真よりも技術的な実験を多く行い、なかでもソラリゼーションには特に興味を持ち、のちに特許も取得しています。1941年に卒業、すぐに商業写真で生活を始めます。1948年、エドワード・ウエストンに出会い、決定的な影響を受けると、それまでの実験的な作品をやめ、ストレートな写真を撮るようになります。8×10インチの大型カメラでの撮影を始めますが、そのプリントは比類ない美しさで、イメージの深い象徴性を支えています。バロックは1975年、73歳でその生涯を終えるまで、撮影と同時に作品を支える自身のものの見方、捉え方について書き続けました。作品を支えるそれらの言葉もあわせて展示いたします。
ウィン・バロック「森の中の子供」1951年
Wynn Bullock, Child in Forest © 1951/2006 Bullock Family Photography
LLC, All Rights Reserved
[禁無断掲載]
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ウィン・バロック「そこに光あれ」1954年
Wynn Bullock, Let There Be Light © 1954/2006 Bullock Family Photography LLC, All Rights Reserved
[禁無断掲載]
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1955年、ニューヨーク近代美術館は、「人間家族」(ザ・ファミリー・オブ・マン)と題する大規模な展覧会を開催しました。同展は、写真の見方を大きく展開させるエポック・メイキングな写真展となりましたが、企画したエドワード・スタイケンは、戦争と原爆の使用への反対を視覚的に訴えました。朝鮮戦争直後のアメリカで、人間の根元的な善の部分を再び信じようと企画したスタイケンは、503点で構成した展覧会の1枚目にバロックの「森の中の子供」を展示したのです。 この作品が展覧会が目指したものを象徴させたと言っても過言ではなく、同展にバロックの作品は2点出品されましたが、もう一点の「そこに光あれ」(Let There Be Light, 1954年)は、コーコラン・ギャラリー(ワシントンDC)で行われた6万5千人のアンケートにより、最も好きな写真に選ばれました。 同作品のタイトルとなったこの言葉は、旧約聖書の「創世記」、世界の始まりのようすを示す冒頭にあります。「初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の魂が水の面を動いていた。神は言われた。/『光あれ。』/こうして光があった。神は光を見て、良しとされた。神は光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。」(「創世記」1:1-5)天と地を分ける水平線と、豊かな海と海へ注ぎこむ川。この作品には、バロックの世界観と新しい平和な時代への希求を見て取ることができるのではないでしょうか。
ウィン・バロック「孤高の木」1956年
Wynn Bullock, Stark Tree © 1956/2006 Bullock Family Photography LLC,
All Rights Reserved
[禁無断掲載]
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ウィン・バロック「森の道を歩く子供」1958年
Wynn Bullock, Child on Forest Road © 1958/2006 Bullock Family Photography
LLC, All Rights Reserved
[禁無断掲載]
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バロックの作品は、明快な自然の美しい写真のように見える一方で、それぞれのイメージの拡がる方向へ踏み込んで行こうとすればするほど、糸口の見えないミステリーのように、深い霧に吸い込まれていくような魅力を湛えています。バロックは次のように語っています。「たとえば、あなたが何かの写真を撮るとき、外面的なものによって感覚を喚起されるだけでなく、内面に何かがあると感じるものを撮ろうとする。目には直接見えないが、頭の中では内面に何かがあるとわかる写真だ。これは、私に言わせれば、内省的なものではない。これがリアルなのだ。」「私の作品は、人間の持つ力に対する前向きの考え方を表現したものだと考えている。神秘的で捉えどころのない観念に陥らない前向きの信念だ。」 バロックの作品制作は、自身をとりまく世界に対する心の動きを象徴するものであり、自然の力、自然に在るものを深く理解しようとするひたむきな探求そのものだったといえるでしょう。
近年、画像のデジタル化によって、写真のさまざまな可能性は大きく広がったものの、残念ながら多くのモノクロ印画紙が生産中止を余儀なくされています。モノクロ印画紙は、感光剤として銀を使用していますが、バロックが多くの作品を制作した50-70年代当時の印画紙は銀の含有量が多く、そのため、階調の滑らかな美しさと煌めきを見ることができます。バロック作品を支えるモノクロームの静謐な美しさもあわせてご堪能いただけることと思います。
ポストカード(8種)は、当館ミュージアム・ショップならびに当館オンライン・ショップにて取り扱っております。
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copyright(c)2006・Kiyosato Museum of Photographic Arts
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