●「アンコール小児病院」サポート・プロジェクト2003 |
2002年に引き続き、今年もK・MoPA音楽堂前広場「石柱の庭」にて8月3日(日)、「アンコール小児病院」サポート・プロジェクトを開催しました。
今回のコンサートは、当館のチャリティ・コンサートの趣旨をよく知るプロデューサーで当館の運営委員でもある浅井栄一氏の呼びかけにより、実現したものです。さらには正倉院の古代楽器復元にたずさわり、作曲も手がけている現代音楽家・一柳慧氏がコンサートにご賛同くださり、同氏の古代楽器解説と7名の演奏家による正倉院復元古楽器の演奏会「千年の響きー清里」を開催致しました。
また、古代の人々が自然の中で耳を澄ませたように、楽器そのものの音色をお楽しみいただこうと、屋外での演奏を企画。当日は大変天候に恵まれたものの、演奏会は、標高1000メートルの避暑地・清里にしては“暑い”スタートとなりました。
眩しい日差しが燦燦と降り注ぐ午後4:00開始の第一部は、演奏家の笹本武志氏による雅楽の楽器解説、そして排簫(はいしょう)
・龍笛の演奏をはじめ、中村仁美氏の大篳篥(おおひちりき)・篳篥の演奏、真鍋尚之氏の竿(う)、笙の実演が。はじめて雅楽に触れる方々にとって親しみやすい曲と、楽しいレクチャーでした。
強い陽射し。172名のほぼ半数が柱(写真手前)の影に
来場者全員が参加した唱歌・「越殿楽」や、「遠き山に日は落ちて」では、辺りの蝉しぐれや鳥の声と雅楽の楽器の調和に、目を閉じて古への思いを馳せているかのような来場者の姿もみられました。
正倉院復元古楽器の解説は一柳氏。演奏家によるデモンストレーションを行いながら、一つひとつの楽器の特徴を丁寧にわかりやすく教えてくださいました。 |
左から笹本武志、中村仁美、真鍋尚之
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古代楽器の解説をする一柳慧 |
第二部の演奏前には、館長の細江英公よりアンコール小児病院支援について、コンサート開催の意義について、NGOフレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーからの最新情報を交えながら具体的な説明をさせていただきました。
刻々とせまる夏の夕暮れ、第二部の演奏では、一柳氏作曲の「時の佇いU」「月の変容」など、復元楽器、雅楽の楽器、洋楽器楽曲による4曲を披露。福永千恵子氏の軋筝(あっそう)、ハープ奏者篠ア史子氏の箜篌(くご)、神田佳子氏の方響(ほうきょう)、編鐘(へんしょう)、甲斐史子氏のヴァイオリンと軋筝など、会場は、古代と現代の邂逅ともいえる調べに包まれました。
箜篌を演奏する篠ア史子
多くの方のご来場をいただいた本公演、チケットによる収益は、アンコール小児病院にすべて寄付させていただきました。2007年まで継続する予定の当プロジェクトは、来年も新しい企画を携え、一人ひとりの心に届くようなものを目指したいと思います。
(文責:広報主任 小川直美 写真:学芸員補 野嵜雄一)
<復元楽器> 箜篌(くご) 排簫(はいしょう) 大篳篥(おおひちりき) 竿(う)
方響(ほうきょう) 編鐘(へんしょう) 軋筝(あっそう)
<解説> 一柳慧(いちやなぎ とし/作曲家)
<出演者>
篠ア史子(しのざき あやこ)
福永千恵子(ふくなが ちえこ)
笹本武志(ささもと たけし)
中村仁美(なかむら ひとみ)
真鍋尚之(まなべ なおゆき)
神田佳子(かんだ よしこ)
甲斐史子(かい ふみこ)
<プロデューサー> 浅井栄一 <演出> あさい あい <舞台監督> 山下博之
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●舞踏ライブ「細江英公に捧げるオマージュ」
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巡回展示の最後を飾る「細江英公の写真:1950-2000」展開催を記念し、2003年7月26日(土)、舞踏家の元藤Y子氏と若い舞踏家14名によるライブを行いました。
元藤氏は、細江英公の作品「鎌鼬」の被写体である舞踏家・故土方巽氏の夫人であり、細江英公とは50年来の友人。細江英公巡回展のすべての会場のオープニングなどに関わられましたが、最後の会場である当館でのライブは感慨もひとしおとのことでした。舞踏のみならず各会場の特徴を活かした演出で類い稀な才能を発揮する元藤氏、そして細江英公からも様々なプランが上がり、最終的には館の内外3カ所を会場として利用、そのために出演者、観客共に移動しながらのライブという、当館にとって初めての試みを行うことになりました。スタッフも、全員が準備と当日の裏方に徹しました。
4名の男性の人力で動かす黒い移動幕、長さ10mの青い布、韓国のドラなど、出演者、演出家、当館スタッフが準備を分担、当日のリハーサルはたった一度。
オープニングの館長挨拶のあと、館長・細江自身がエントランスの人工の滝の前に来場者を誘導。黒い幕からは頭上に烏をのせた元藤氏の後ろ姿が現れ、短いソロの一幕が始まりました。 |
元藤Y子のソロ(エントランスにて) /撮影:吉元和子 |
撮影:吉元和子 |
再び細江が来場者を館内に誘導し、ミュージアムからまっすぐ北に伸びる階段へ。階段いっぱいに広げた10メートルの青布をカットするセレモニーには、ご来場の多くの方々にもご参加いただきました。
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撮影:吉元和子
階段でのセレモニー 元藤Y子(右)と細江英公(左) |
客室通路から石柱の庭へ /撮影:野嵜雄一 |
宿泊施設・パトリの客室通路を踊りながら進む元藤氏の先導で、最後には「石柱の庭」に到着。そこで観客が目にした光景は、青々とした芝生にそびえる列柱と、その頂上にギリシャ彫刻のように立つ6人の男性舞踏家でした。
石柱の庭 /撮影:吉元和子
芝生に直に置かれた席に観客が座ると、そこは360度の舞台空間が広がります。
石柱の上の舞踏家 /撮影:野嵜雄一
雷の効果音が轟き、彫像と化していた男性がゆっくりと動き始めると、舞台上に白塗りの女性舞踏家が、さらには韓国の民族音楽に合わせ、観客の間をぬって走り、踊る舞踏家。最終章では「アメイジング・グレイス」にのせて元藤氏ほか全員が踊る中、列柱上のダンサーの鳴らすドラの音で閉幕しました。
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撮影:野嵜雄一 |
元藤Y子(右)と門下生たち /撮影:吉元和子 |
約一時間のライブでは快晴だった第一幕から一転、人工の雷の音を合図に、にわかに小雨が振り出すなど天候が演出に加わったくれたかのような場面も。ご来場くださった方々が本当に感激した様子で口々に感想を話し合ってくださっていたことが印象に残りました。当館を設計された栗生明氏も本公演をご覧になり、建築全体を見事に舞台空間に変えた元藤氏に感謝の言葉を述べられていました(栗生明氏へのインタビューは、友の会・会報19号に掲載いたします)。様々な面で新たな可能性を切り開いた舞踏ライブ。ご来場の方々とアーティスト、そしてスタッフのすべてがエキサイティングな体験を共にした一日でした。
(文責:広報主任 小川直美)
<出演> 元藤Y子と門下生、細江英公
<舞台監督> 長田良平 <音響> 山本高広
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●野口健 講演会「山を語る、自然を歩く」を終えて |
7月8日(火)19:00、当館の主催、高根町ふれあい交流センターを会場に、アルピニストの野口健氏を迎え、講演会を開催いたしました。昨年、野口健氏の緊急入院により延期となっていた本講演。野口氏の生の声を聞くために、地元を中心に約250名の方が来場されました。野口氏は、落ちこぼれといわれ停学になった高校時代から、登山の道に進むきっかけとなった植村直巳さんの著書との出会いや、大きな挫折を味わったエベレスト登山、さらには山頂に大量のごみを捨てていく日本人のマナーの悪さ、モラルの低さをヨーロッパ登山家に指摘された苦い経験をもとにエベレスト清掃登山に踏み切った経過などを率直に語ってくださいました。
今後も環境に対する基本的な考え方、日常的な接し方など若い世代や子供たちと共に模索し、実行していく決意を語られた野口氏。その活動にエールを送ることはもちろんですが、野口氏と共に現状を見据え、自分たちにできる身近なことから実践していきたいと感じた一時間半の講演会でした。
講演終了後のサイン会で、来場者と握手をかわす野口健
当館では昨年に引き続き、“八ヶ岳の日”(11月8日=いいやつの日)にクリーンウォークを開催される「八ヶ岳歩こう会」に協力いたします。八ヶ岳南麓の美しさを次代に残すためのウォークにご一緒に参加しませんか?
詳細は、八ヶ岳歩こう会のホームページ www.yatsugatake.net/arukoukai/をご覧ください。(文責:広報主任 小川直美 写真:学芸員補 野嵜雄一)
野口健氏講演会
主催:清里フォトアートミュージアム
後援:清里観光振興会、財団法人キープ協会
協力:八ヶ岳ジャーナル社、八ヶ岳歩こう会、八ヶ岳南麓景観を考える会
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●2003年 パトリ祭
7月5日(土)、6(日)2日間開催の「パトリ祭」。清里の美味が一同に集まりアトラクションを楽しみながら、食事や買い物ができるお祭りです。 |
海老一染之助 伝統芸能太神楽曲芸 |
琵琶演奏をするシャオ・ロン(右)とピアノ演奏の渡辺雅二(左) |
土曜夜8:00からの無料コンサートは、今年のテーマ「和」を演出すべく、野外の各テーブルに蝋燭を灯し、ステージにも和の情緒あふれる活け花をあしらいました。クリストファー遙盟氏の尺八ときむらみか氏による日本歌曲、お二人の素晴らしい演奏と演出によって、ご来場くださった方々には初夏の長い夜を満喫いただけたことと思います。
(文責:広報主任 小川直美 写真:学芸員補 野嵜雄一) |
クリストファー遙盟(右)ときむらみか(左)
主催:パトリ祭実行委員会 共催:清里観光振興会
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