KMoPA

Illust


「はじめての宇宙の歩き方」
フォルバーグ、NASA、マリン、すばる望遠鏡の写真


「はじめての宇宙の歩き方」
フォルバーグ、NASA、マリン、すばる望遠鏡の写真
Traversing the Cosmos: Photographs by Folberg, NASA, Malin & Subaru Telescope

会 期 :2006年6月24日(土)〜11月26日(日)
休館日 : 毎週火曜日、7/4,5(7/6〜8/31は無休)


主催: 清里フォトアートミュージアム
     Kiyosato Museum of Photographic Arts(K'MoPA)
後援:自然科学研究機構国立天文台、山梨県教育委員会
協力:Aperture、フォト・ギャラリー・インターナショナル

[開催趣旨]

 清里フォトアートミュージアムは、三つの基本理念、「生命(いのち)あるものへの共感」「永遠のプラチナ・プリント」「若い力の写真:ヤング・ポートフォリオ」に基づき、収集・展示を行っております。

このたび、清里フォトアートミュージアムでは、「はじめての宇宙の歩き方」―フォルバーグ、NASA、マリン、すばる望遠鏡の写真展を開催いたします。人類は、太古の時より漆黒の闇に瞬く星への憧れや畏怖を抱き、多くの神話を生み出して来ました。やがて地動説が唱えられ、望遠鏡を手に入れた後には、広大な宇宙の驚異と謎への挑戦が重ねられてきました。1957年世界初の人工衛星スプートニクが宇宙へ飛び立ち、1969年7月20日にはアポロ11号に乗ったアームストロング飛行士が月面に降り立ち、その足跡を残しました。そして現在も、より遠くを見、より多くを理解するための技術開発が進み、宇宙での生命の可能性を探るなどの研究が行われています。宇宙にはこれからも「はじめて」のことがわたしたちを待ち受けているのです。
 清里は、もとより天文観測に適した地として、個人で天文台を設けて観測する愛好者も多く、隣接する野辺山の宇宙電波観測所(国立天文台)には国内外から多くの観測者が訪れます。大気が澄み、星空の美しい清里へ足を運ばれる方々に、本展をとおして写真を見る楽しさと、ベストセラーの旅行本『地球の歩き方』からインスピレーションを得たタイトルのとおり、気軽に「宇宙の歩き方」を体感できる"ツアーガイド"となればと考えています。


NASA
「宇宙遊泳:チャレンジャー4 号 41-B、1984 年2 月3―11 日」



NASA〈宇宙への旅―25 年の歴史〉より
「ジェミニ・タイタン IV 号、1965 年6 月3―7 日」




本展覧会は、1)ニール・フォルバーグがモノクロで神々の地を描く星空と夜景47点、2)NASA(アメリカ航空宇宙局)のアーカイブから、月面着陸を含む人類史上重要な記録写真のベスト・セレクション24点、3)"天文写真のアンセル・アダムス"の異名を持つデイヴィッド・マリンの美しいカラーとモノクロ作品28点、そして4)ハワイのすばる望遠鏡(国立天文台)の最新未公開写真を含む17点の全115点による4部から構成されています。

●ニール・フォルバーグ(アメリカ、1950-)は、1950年サンフランシスコに生まれ、76年エルサレムへ移住。87年にシナイ山やエジプト、ヨルダンの砂漠を撮影したシリーズを発表。90年代には世界中のシナゴーグを撮影し、欧米各地にて展覧会を行っています。展示作品は、イスラエルで撮影されました。
無限の宙(そら)を背景に、暗闇にようやく浮かび上がる地上の営み。夜空と大地の境界が朦朧とする神秘の世界を再現したモノクロ作品は、神々との距離が近く感じられた時代の星への憧れや畏怖、そして深い精神性を顧み、神話への入口を示しているかのようです。
星空と月明かりに照らされた目の前の風景を一枚のネガに写し取ることは不可能なため、フォルバーグは赤外線フィルムとハイスピードフィルムで風景を撮影し、超高感度のテクニカル・パンフィルムで夜空を撮影。その2枚のネガからデジタル処理によって一枚のネガを作り、従来の暗室作業によりモノクロ作品を制作しています。



ニール・フォルバーグ
「射手座」2000 年

[禁無断掲載]
© Neil Folberg


ニール・フォルバーグ
「ヘール・ボップ彗星」1997 年

[禁無断掲載]
© Neil Folberg


●NASAの写真は、その膨大なアーカイヴの中から、人類が地球を離れ、はじめて他の天体に降り立った偉大なアポロ計画の25年を記録するものとして、1991年ヒューストン美術館やスミソニアンの写真キューレーターらが20点を選択し、ダイトランスファーという深みと立体的な美しさを持つカラープリントやカーブロ・プリントのポートフォリオ(作品集)が制作されました。これらの写真を選ぶ基準となったのは、第一に写真としての美しさ、第二に宇宙開発計画を背景とした歴史的な重要性、そして第三がポートフォリオとしてのまとまりでした。本展では、ポートフォリオに加えて「宇宙遊泳」(チャレンジャー4号、1984年)などを加えた24点を展示いたします。



ニール・フォルバーグ
「ばら星雲」2001 年

[禁無断掲載]
© Neil Folberg

デイヴィッド・マリン
「オリオン座の馬頭星雲とNGC2023」
Courtesy Howard Schickler Fine Art and David Malin
[禁無断掲載]
© Anglo-Australian Observatory

●デイヴィッド・マリン(イギリス、1941-)は、シドニーのアングロ・オーストラリアン天文台の天文学者で、多くの科学論文や写真集を著し、その写真は世界中で展示され高い評価を得ています。1975年より、カラー写真の基本原理である3色分解からアイデアを得て、独自のコントラストの美しいカラー写真の制作を始めました。マリンの写真は、天界の新しい景観ともいえる比類のないインパクトの強さを持ち、宇宙を新しい視点で表現したものと高い評価を得ています。天文ファンならずとも息をのむ壮大な宇宙の美と豊かな魅力を湛え、天文写真の古典(クラシック)といえるでしょう。優れた科学写真に与えられ、写真のノーベル賞ともいわれるスウェーデンのレナート・ニルソン賞を2000年受賞しています。
本展では、カラー作品と同時にプラチナ・プリント技法を用いたモノクロ作品も展示いたします。



デイヴィッド・マリン
「三裂星雲M20」
Courtesy Howard Schickler Fine Art and David Malin

[禁無断掲載]
© Anglo-Australian Observatory

デイヴィッド・マリン
「渦巻き銀河M83、NGC5236」
Courtesy Howard Schickler Fine Art and David Malin
[禁無断掲載]
© Anglo-Australian Observatory


●すばる望遠鏡は、1997年ハワイ島マウナケア山の山頂(標高4200メートル)に設置された大型光学赤外線望遠鏡です。有効口径8.2メートル、世界最大の一枚鏡で天体からの微弱な光をを集め、鏡面はコンピューター制御で誤差を極めて少なく保たれています。風通しの良い新型ドームによって空気の乱れを少なくし、星像の乱れを抑えることにも成功。約150億光年の「宇宙の果て」を望むべく、画期的な観測性能を達成するための新しい技術革新で装われた新世代の望遠鏡です。星の誕生の謎や、地球のような天体や生命が存在する可能性など、さまざまな現象を探り、天文学の未来に大きく貢献するすばる望遠鏡の未公開映像を含む観測成果を展示します。
 本展は、ニール・フォルバーグ、NASA、デイヴィッド・マリン、すばる望遠鏡の4部から構成されています。写真家、宇宙飛行士、天文学者、そして新世代の望遠鏡という異なった4種の視点と表現を併せて見ることができます。写写真は、遠くて見えにくいものや、現象の瞬間をとらえて可視化すると同時に、写真家の視点を写真の中に表現することを可能とします。写真は、記録の側面で科学を支えて来ましたが、さまざまな発見と新たな感動をもたらすであろうこれらの作品は、科学と芸術がいかに親密な関係にあるかをも物語っているのではないでしょうか。
夜空には、宇宙の歴史をはじめ、ありとあらゆる情報が書き込まれており、宇宙を知ることは、みずからを知ることと言われています。私たちが深く自然を理解することは、"宇宙人"である人類の将来をより豊かなものへと導くことと同一線上にあり、私たちをその方向へと導くエネルギーが宇宙には満ちているのです。星々からのメッセージを体感してみてはいかがでしょうか。

▲上に戻る


copyright(c)2006・Kiyosato Museum of Photographic Arts