清里フォトアートミュージアム 学芸員・田村泰男
4月22日から24日まで3日間、台北にて開催されていた2016 Young Art Taipei(台湾)主催の写真ポートフォリオ・レビューに、レビューワーとして招かれ、現地へ行って参りました。 Young Art Taipeiは、現代美術のイベントとして8年前に始まり、3年前より写真もその一部門となりました。
【Young Art Taipei】 会場は、台北市内にあるシェラトンホテル。9階のフロアーを貸し切り、出展者は1室を1ブースとして展示しています。ホテルのベッドの上は勿論、バス・トイレまで使っての展示です。最終日の会場は大勢の若い人で溢れ、熱気と盛り上りが感じられました。日本からの出展者もあり、中にはYPOB(山本功巳氏、山内悠氏、松井泰憲氏)が自分の作品や写真集を販売する姿も見られました。頼もしい限りです。
【ポートフォリオ・レビュー】
ポートフォリオ・レビューは、4月23日、台北駅から徒歩10分の場所にある台北芸術村にて行われました。審査員は全11名。台湾5名、日本3名、韓国、香港、北アイルランドより各1名でした。 一番右がポートフォリオ・レビューのディレクター・沈昭良氏(写真家)です。日本からは、田村の他、菅沼比呂志氏(ガーディアン・ガーデン)、姫野希美氏(赤々舎)が審査員として招かれていました。 レビューの参加者は26名で、一人の審査員が12人のポートフォリオ・レビューを行います。すべての作品を見た後に、審査員の投票でベスト・ポートフォリオを1名選考しました。台湾の作家の作品には、台湾の現在を捉えたものが目立ちました。その中でベスト・ポートフォリオに選ばれたのが李岳凌氏の“Listening to the Dark”で、台湾の夜の街をスナップしたカラー作品で、幻想的でした。ヤング・ポートフォリオへの応募を勧めましたが、残念ながら40歳とのこと。今後の活躍が期待される作家です。 また、ベスト・ポートフォリオに最後まで残った陳淑貞さんの“After”が審査員特別賞に選ばれました。この作品はホテルの客が帰った後の部屋の様子を撮った作品で、選考員に強い印象を与えておりました。この二人以外にも台湾の写真表現の広がりとレベルの高さを感じました。 ポートフォリオ・レビュー参加者の中には松井泰憲氏、ハオ・リー(台湾)氏、チョン・コクユウ氏(マレーシア)などYP作家の姿もありました。 ベスト・ポートフォリオ:李岳凌“ Listening to the Dark”
審査員特別賞:陳淑貞“After”
【アートフォーラムでのYPレクチャー】 ポートフォリオ・レビューの翌日、同じ会場にてアートフォーラムが開催されました。韓国、日本、台湾からの講師が、スライドを使ってそれぞれの国の写真事情を解説。参加者は約60名。若い人が中心で、大変熱心に見ていました。 私はYPについてのスライドショーを行い、応募を呼び掛けてきました。終了直後に、「応募します」という声を直に聞くことができました。
KMoPAは、2014年のTaipei Photo Show (TAPS)にて、事務長の小川によるYPレクチャーを行っております。2015年度YP募集に早速その影響は現れ、台湾のハオ・リー、シム・チャン、ウォン・ウェイ・チョン3人の作品を収蔵いたしました。 台湾では2度目となる今回のレクチャーでも、現地の作家たちと直接言葉を交わし、作品を見るということが、作家にとっても、KMoPAにとっても、良い結果に繋がることを期待します。今後も積極的に機会をとらえて、台湾をはじめ世界の国々に広くYPを知っていただき、ご応募いただきたいと思っております。