プラチナ・プリントとは、 写真を焼き付ける技法のひとつです。通常のモノクロ・プリントは銀が光に感光する性質を利用したもので、ゼラチン・シルバー・プリントと呼ばれますが、プラチナ・プリントは文字どおり白金を用いた焼き付けの技法です。画像は黒のしまりが良く、階調の幅が広く、グレーの調子がほとんど無限に表現できます。また白金の科学的安定度が極めて高いため、現在写真印画の中でこれ以上耐久性に優れた技法はないとされています。
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ピーター・ヘンリー・エマーソン
「ノーフォーク湖沼の生活と風景」より 1886年
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写真が 正式に誕生したのは1839年ですが、プラチナを印画紙に使用する試みはシルバー・プリントより早く、1831年から行われていました。清里フォトアートミュージアムでは、プラチナ・プリント作品の収集と技法の継承を基本理念のひとつとして、多くの作品を収蔵しています。本展では、収蔵作品より、プラチナ・プリント発明者であるイギリスのウィリアム・ウィリスが、1878年、イギリスの写真協会誌上で技法を正式に発表するために制作した作品から、現代の写真家によるプラチナ・プリント作品まで約100点を展示いたします。
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アービング・ペン
「ヘルズ・エンジェル:ダグ」1967年
[禁無断転載]
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プラチナ・プリントは 1920年代まで盛んに作られ、その優美な色調が多くの絵画主義(ピクトリアリズム)作品や肖像写真を生み出してきました。ところが第一次世界大戦の影響で、プラチナの価格が急騰したため下火となり、それ以降70年代に復活されるまでの間、作品は残されていません。しかし、70年代になってアメリカを中心に再び人気を回復し、写真材料としては高価で複雑なプロセスでありながらも、現在は多くの写真家がプラチナ・プリント作品を制作しています。
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ジョージ・H.シーリー
「乙女とボウル」1907年
[禁無断転載]
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写真は “光の芸術”とも言われます。プラチナ・プリントは、“光”を定着するための表現技法のひとつとして、古典技法の単なるリバイバル現象ではなく、写真家を再び魅了しているのです。その優しい輝き、あるいは硬質で明らかな煌めき、細密画の版画のようなテクスチャー、微妙なグレーの濃淡、またビロードのように深い黒はわずかな風にも粉墨のように舞い上がるのではないかと、思わず息をひそめて顔を近づける・・・。プラチナ・プリントの美しさは120年もの時を経て、そして今後の世紀においても、私たちに感動をもたらし続けることでしょう。
*プラチナ・プリントは、鉄塩の感光性を利用し、塩化白金と鉄塩の感光液を水彩画用紙に塗布した印画紙を乾燥させ、ネガを直接印画紙の上に置き、密着させて、紫外線に感光させます。その後クエン酸アンモニウム液にて現像、洗浄し、乾燥を行います。
**K・MoPAでは、プラチナ・プリント・ワークショップも定期的に開催しています。実作品を見ながらの技法の解説、ネガ作り、プリント現像などの実技を2日間にわたって行います。次回の開催については、「新着ニュース」をご覧下さい。
プラチナプリント収蔵作品 ポストカード8枚セット(1000円)
(ミュージアムショップ、オンラインショップにて取り扱っております)
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